虫歯治療でもっとも大切にしている点は、再び同じ場所を治療することを指す「再介入」を防止するために最大限の努力を払うということです。治療後の再発の可能性は、治療の精度にも大きく左右されます。
例えばCR充填（削った部分をコンポジットレジンと呼ばれる歯科用の樹脂素材で詰める治療）や被せもの、詰めもの一つとっても、その処置の正確さや丁寧さによって治療後の歯に歯垢（プラーク）が付着しやすくなるかどうかも変わってきます。そのための工夫の一つに、CR充填を行った後に歯と歯が隣接するコンタクトの部分を綺麗に研磨することが挙げられます
。充填後、まずは研磨用の器具を使って全体的に磨き、器具が届かないような奥の部分は手で使う器具を用いて綺麗に仕上げています。丁寧に研磨することで、プラークや着色が付きづらく、見た目も美しい歯が実現します。綺麗になった歯を再介入のない状態で維持するために、患者さまには治療後の歯磨きやクリーニングをしっかりと続けることをお願いしています。

当院では、生涯ご自身の歯で健康に生活していただくために「可能な限り削らない」ことをモットーとしています。
歯を削る量を少なくする方策の一つとして、状況によっては歯の切削で使用するドリルを使わずに「スプーンエキスカベータ―」と呼ばれる道具を用いて手で少しずつ削っていくことを実践しています。
虫歯に侵された部分は歯が軟らかくなっており、一般的には高速回転をするタービンなどの器具で効率的に削っていきますが、健康な歯質を必要以上に削り過ぎてしまう危険性もあります。特に神経が近い部分の虫歯を削る際には、できるだけ健康な歯と神経を残すためにスプーンエキスカベーターで慎重に取るように心がけています。
通常よりも少し時間はかかってしまいますが、「健康な歯を可能な限り残す」という当院のこだわりとお考えいただければと思います。

虫歯が大きく進んで溶けた歯や、歯周病でグラグラになってしまった歯など、抜くか抜かないかの判断が難しい歯については、患者さまの価値観を尊重した治療を行うように心がけています。例えば虫歯が深く進行して欠け、歯ぐきに埋もれている状態の歯で、歯ぐきの位置を下げたり、歯を部分的に引っ張り上げるエクストリュージョン（歯根廷出）と呼ばれる治療法を取り入れたりすることで抜歯を避けられる可能性があるなら、そのような方法も選択肢の一つとしてご提案しています。
「気になるから早く抜いてほしい」という方や「グラグラだけど何とか残してほしい」という方など、患者さまによって考え方もそれぞれです。難易度の高い方法では保険外診療になることも多いため、絶対の正解はないという考えのもと、患者さまとしっかりと話し合って望んでいる形を明確にし、最善の治療を施していきます。